ひまわりなどの名画で愛されている画家フィンセント・ファン・ゴッホ。
1890年、パリ近郊の村でリボルバー(回転式拳銃)で自らの命を絶ったといわれています。
しかし、その死について他殺説も浮上。
果たして自殺か!?他殺か!?
アート史上最大の謎ともいわれているゴッホの謎の死を描いた"リボルバー"。
史実を基にしたアート小説の名手である原田ハマ氏による傑作ミステリー作品です。
主人公は、美術史の修士号を持つパリ在住の日本人女性。
彼女がゴッホの死の鍵を握る画家ゴーギャンの秘密に迫ります。
目次
ゴッホの死の鍵を握るゴーギャンの秘密アート小説"リボルバー"あらすじ
ゴッホの絵に魅了された一人の少女、高遠冴がいました。
アート好きな母が中学生の冴に教えてくれたのは、ゴッホは南フランスの街"アルル"で2ヶ月間だけ画家のゴーギャンと共同生活をしていたこと。
意見の食い違いから出て行こうとしたポール・ゴーギャンを引き止めようと、ゴッホは自ら耳を切り落としたこと。
それから間もなく、心身を病んだゴッホがピストルで自ら命を絶ってしまったこと。
数奇な運命を辿ったゴッホとゴーギャンに魅了された冴はその面影を追い、パリ大学へ進学。
美術史の修士号を取得し卒業した今は、パリの小さなオークション会社に勤めている。
ゴッホの命を奪ったのはリボルバーなのか?!
ある日、どこか思いつめた様子の女性が冴の元を訪れる。
サラと名乗った女性はバックの中から錆びついた一丁の「リボルバー」を取り出した。
オークションにかけるには状態が悪く、価値がなさそうに見えるボロボロのリボルバー。
しかし、サラは思いもよらない言葉を口にした。
「見て・・・いただけますか?」
消え入りそうな声で、女性が問うた。
それは、錆びついた一丁の拳銃"リボルバー"だった。
「あのリボルバーは、フィンセント・ヴァン・ゴッホを撃ち抜いたものです。」
サラが持ち込んだリボルバーは本当にゴッホの命を奪ったものなのか。
冴はその手がかりを求め、オランダ アムステルダムにあるファン・ゴッホ美術館へ。
そこで話を聞いたのは、ゴッホの展覧会を企画したゴッホ美術館キュレーター アデルホイダ・エイケン。
彼女は「私もあのリボルバーを見せられたことがある」と冴に告げた。
ゴーギャンとの共同生活をしたゴッホ最期の地
〜オーヴェール=シュル=オワーズ〜
リボルバーについて調べる冴は、ゴッホが命を絶ったパリ近郊の小さな村へ行くと、そこで様々な声を聞くことになる。
「・・・・ファン・ゴッホは、ほんとうにピストル自殺したのか?」
「ー殺されたんじゃないのか?ゴーギャンに。・・・あのリボルバーで、撃ち抜かれて」
そして物語の後半、ゴーギャンとゴッホは2ヶ月の共同生活の間、2人でイーゼルを並べて制作に励みます。
目の前で、キャンパスに強烈な個性を放つひまわりを描いていたゴッホに対して、ゴーギャンは一体なにを思っていたのか。
互いに議論を交わし、精力的に絵を描く2人の日々にやがて生まれた不協和音。
そして、ゴッホは耳を切り命を絶った。
ゴッホは耳を切り落とすほど追い詰められていたのに、なぜゴーギャンは助けてあげなかったのだろう。
同じ時代に生きたライバルでもあり、盟友でもあるゴッホとゴーギャンの一丁のリボルバーから浮かび上がってくる彼らの切なる思いとは?
時代を超えて孤高の画家たちに思いを馳せる傑作ミステリーです。
原田ハマさんのプロフィールと作品
著者は、国内外での美術館で勤務経験を持つアート小説の名手原マハさん([birth day="19620714"]歳)。
実は、お兄さんの原田宗典さんも小説家として活躍されてます。
原田ハマさんは、森美術館設立準備室ニューヨーク近代美術館勤務を経てフリーのキュレーターカルチャーライターになります。
これまで ルソー、ピカソ、モネなどの物語を手がけ、読者も魅了してきた原田さんが今作では、ゴッホとゴーギャン孤高の画家たちに迫るミステリーに挑みました。
ふりがな | はらだ はま |
生年月日 | 1962年7月14日 |
出身地 | 東京都小平市・岡山県 |
出身校 | 関西学院大学文学部日本文学科 早稲田大学第二文学部美術史科卒業 |
職歴 | 伊藤忠商事株式会社 森ビル森美術館設立準備室 ニューヨーク近代美術館勤務 |
好きなアーティスト | パブロ・ピカソ |
主な作品
・楽園のカンヴァス:ルソー
・ジヴェルニーの食卓:モネ
・暗幕のゲルニカ:ピカソ
・たゆたえども沈まず:ゴッホ
ゴッホが自殺に使ったかもしれないリボルバーは実在?!
実は、ゴッホが自殺に使ったかもしれないリボルバー(7mm口径)は本当に存在します。
1965年になってようやく農民が発見したリボルバーは、状態は悪くボロボロだったといいます。
1890年のゴッボの死後から発見されるまでの75年の間、リボルバーは土の中に埋まっていたのです。
リボルバーを発見した農民は、ある宿主に銃を譲渡したといいます。
2019年6月19日、パリでそのリボルバーのオークションが行われたのですが、実は著作者の原田さんはその様子を現場で見ていたそうです。
発見されたリボルバーは13万ユーロ(約1,579万円)で落札され、予想価格の2倍以上でした。
出品者は、リボルバー所有者の子供。
原田さん
すごくおもしろい題材になりそう。
ゴッホが自殺に使ったかもしれないピストルを巡る物語を描こう。
当時、130年前の前衛画家たちが何を思い、何を苦しみ、何のために描いたのか明らかにしてみたかったそうです。
まとめ
ゴーギャンは悪役っぽいが、でも良きライバルであり同士のような存在ですね。
最初、アート小説と聞いてアートに詳しくない私には難しいかなと思っていたのですが、物語の進み方が丁寧で入り込みやすかったです。
主人公がフランスで奮闘するで日本人の女の子ということで、その部分も共感しましたし応援したくなるのもポイントだと思います。