2021年、将来性豊かな新人作家を発掘する第12回小説 野生時代新人賞大賞を受賞した『君の顔では泣けない』をご紹介。
この作品がデビュー作となる注目の著者は、君嶋 彼方(きみじま かなた)さん。
選考委員を務めた直木賞作家の辻村深月さんが「この作品を推すために選考会に臨んだ」と絶賛する一冊です。
そんな君嶋さんの作品は、デビュー作ながら発売前に重版が決まった話題作。
気になるその内容とは、体が入れ替わったまま15年間生きてきた男女の物語。
昔からあるコミカルになりがちな「男女入れ替わり」がテーマだが、この作品は今までとは違う入れ替わりが解消されなかった後の人生を描いています。
君嶋彼方のプロフィール 出身地や学歴は?
相手の気持ちが分からないからこそ、人は繋がれる。繋がりたいと思う。『君の顔では泣けない』刊行記念 君嶋彼方×辻村深月対談 | カドブンhttps://t.co/3XP9mFSORN
— 辻村深月情報@『闇祓』10/29発売 (@tsujimura_joho_) October 8, 2021
ペンネーム:君嶋 彼方(きみじま かなた)
生年月日:1989年(平成元年)11月8日([birth day="19891108"]歳)
出身:東京都
在住:東京都足立区
最終学歴:明治大学卒業
職業:小説家・会社員
2021年3月15日、第12回 小説 野性時代 新人賞受賞 作品名『水平線は回転する』(主催:株式会社KADOKAWA)
同作を改題した『君の顔では泣けない』で小説家デビューを果たした。
『君の顔では泣けない』あらすじ・ネタバレ
ある日、突然同級生と体が入れ替わり、以来15年間一度も元に戻れないまま生きてきた2人の物語。
30歳の主婦・水村まなみは、夫・涼と娘・まどか(3歳)の3人暮らしながらも家族には言えない大きな秘密がある。
それは年に一度、必ず会いに行く高校の同級生・坂平陸。
その理由とは、彼との間に起こったあることだった。
十五年前。俺たちの体は入れ替わった。
そして十五年。
今に至るまで、一度も体は元に戻っていない。引用:君の顔では泣けない
2人の入れ替わり生活の始まりは、15年前 高校1年生(15歳)の夏。
陸がプールサイドで足を滑らせ、クラスメイトのまなみと一緒に学校のプールに落ちたことがきっかけだった。
プールから上がったときは、何事もなかったはずだった。
しかし翌朝、陸が目を覚ますとそこはピンクのカーテンがかかった見知らぬ部屋。
鏡には、なぜかチェックのパジャマを着た“まなみ”の姿が・・・。
動揺する陸だったが、次第に状況を把握する。
どうやら自分はまなみと体が入れ替わってしまったらしい。
まなみの姿になった陸は、混乱しながらも自転車で喫茶店・異邦人に向かう。
そこで待っていたのは、陸の姿になったまなみだった。
まなみ
ほんとびっくりしたよ、朝起きたら知らない部屋にいるんだもん。
陸
てか、意味分かんなくね?
まなみ
とりあえずさ、もとに戻る方法 探さなくちゃね。
それから2人は思いつく限りのことを試してみたが、元に戻ることはなかった。
プールに落ちる、頭をぶつける、神社の階段を落ちたりと、思いつく限りのことは試した。
そんな状況でも、なんとか笑顔を作り励ましてくれるまなみ。
その姿に陸も覚悟を決める。
いつ元通りになるかなんて分からない。
でも、きっとその時が来ると信じて、お互いを完璧に演じ続けるしかない。
こうして2人の長い入れ替わりの人生がスタートしたのだった。
陸とまなみは入れ替わったことを2人だけの秘密にすると決め、協力して高校生活をやり過ごしていく。
まなみはすぐに“坂平 陸”の生活に馴染み、そつなく暮らしていく。
一方の陸は、“水村 まなみ”になることに戸惑いを隠せないでいた。
女性の体で生きる違和感や人間関係の変化。
そして自分の家族と離れ、まなみの家で暮らすということ。
そんな葛藤に苦しむ陸を明るく支えてくれるまなみだったが、まなみもまた心の内では陸とは違うある切実な思いをかけていた。
そして元に戻ることはないまま時は流れ、2人は入れ替わった姿で新たな人生を歩き始めていく。
運命に導かれた2人がひたむきに生きる姿を描いた物語です。
『君の顔では泣けない』感想・レビュー
君の顔では泣けない/君嶋彼方#読了
よくある入れ替わりの物語とは全然違う。今までにない感じ。
高校生の時に入れ替わり15年。戻った時に困らないようにと日記をつけ、お互いの人生を生きていく。
友達や家族との関係、その時、その時の描写がぐさぐさ胸にささってきた。 pic.twitter.com/SJJc99z7Wx— ゆみ (@mii_20211002) October 7, 2021
『君の顔では泣けない』君嶋彼方(KADOKAWA)読了 「入れ替わりもので元に戻らずその後の人生を歩む」というあらすじに惹かれて読みました 陸くんの感情の流れがすごく良かったです 葬式のシーンが特に印象的でした これはヒットして映像化までいってほしいなあ
— 神北伸之 (@godnorth) October 9, 2021
王様のブランチ、『君の顔では泣けない』見ていただいた方ありがとうございました!
「入れ替わり?よくあるやつじゃん」と思った方ほど読んでいただきたい作品です。
君嶋からは以上です!よろしくお願いします!#王様のブランチ#君の顔では泣けない— 君嶋 彼方 (@kanata_kimijima) October 9, 2021
2021年 第12回 ⼩説 野性時代 新⼈賞 受賞作
第12回 小説 野性時代 新人賞の選考委員は、冲⽅丁さん・辻村深⽉さん・森⾒登美彦さんの3名。
第12回〈⼩説 野性時代 新⼈賞〉 大賞受賞作 (賞⾦100万円) |
『水平線は回転する』
君嶋 彼方(きみじま・かなた) ペンネーム |
第12回〈⼩説 野性時代 新⼈賞〉 奨励賞受賞作 |
『どしょぼね』
河合 紗都(かわい・さと) ペンネーム 生年月日:1979年(昭和54年)4月7日([birth day="19790407"]歳) |
『連鎖するチョイスチョイスチョイスと天秤の帰結』
橋本 秋葉(はしもと・あきば) ペンネーム 生年月日:1996年(平成8年)10月27日([birth day="19961027"]歳) |
⼩説 野性時代 新⼈賞〉とは、2009年より創設された、⽂学新⼈賞です。
これまでにない新ジャンルを築きあげるエンターテインメント作品を広く募集し、読む者の⼼を揺さぶる、将来性豊かな稀代のストーリーテラーを選出します。引用:KADOKAWA
まとめ
入れ替わった男女は、体と心が合っていない状態を隠し続け、どうやってお互いの人生を自分のまま生きていくか模索するというジェンダーを意識させられる作品です。
この非日常を日常として生きる2人の心情が細やかに綴られ、感情の機微やそのリアリィティに友人や親との関係など深く考えさせられました。
2人の渦巻く感情の変化を正面から描かれ、深く納得する秀逸な新ジャンルの1冊です。