作家の乾ルカさんは、2006年に『夏光』でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。
以降、第27回ノベル大賞候補に選ばれた『夜、あるく』、第143回直木賞候補に選ばれた『あの日にかえりたい』など、青春小説を中心に執筆。
2021年の最新作『おまえなんかにあいたくない』は、高校時代に起きたいじめが卒業から10年後に開かれる同窓会をきっかけに思いがけない問題に発展。
登場人物たちが翻弄され、あの頃の気持ちを思い出させてくれる話題作です。
今回は、高校時代とその10年後を描いた話題作『おまえなんかに会いたくない』、乾ルカさんのおすすめ小説やプロフィールをご紹介します。
目次
乾ルカさんのプロフィール 学歴や経歴は?
生年月日:1970年(昭和45年)2月11日([birth day="19700211"]歳)
出身:北海道札幌市
出身校:北海道札幌北陵高等学校
最終学歴:藤女子短期大学国文科卒
職業:小説家(元銀行員・官庁の臨時職員)
官庁・銀行員の臨時職員や資格予備校アルバイトを経て、2006年に短編「夏光」で第86回オール讀物新人賞受賞してデビュー。
乾ルカ 小説おすすめランキング10選
乾ルカさんの小説を読んだ本や読みたい本など、登録数が多い順にご紹介します。(参照:読書メーター)
乾ルカ『おまえなんかに会いたくない』あらすじ・ネタバレ
物語の舞台は、北海道にある白麗高校の3年6組。
その中心グループにいるのが女王と呼ばれ、スクールカーストに君臨する井ノ川 東子をはじめ、いつも彼女と行動をする木下(取り巻きの筆頭)。
そして、明るい性格で男女共に人気がある花田(男子)だった。
一方、クラスの最下層とされているのが、岸本 李矢。
しかし、それを認めたくない岸本は、トップのグループたちと対等に振舞おうとしてますますクラスで孤立してしまうのだった。
カーストトップの女王・井ノ川を中心に上位・中位・下位とクラスの序列は明確である。
更に、岸本は人気者の花田に告白し、あっけなく振られる。
すると、井ノ川を取り巻くクラスメイトから
「立ち位置が違うのに、付き合えるってなんで思うのかな?すごくない?その勘違いが」
「花田にとっては、もらい事故みたいなもの。」
ただでさえクラスで浮いていた岸本だが、より一層孤立しいじめられるようになった。
その後 岸本は転校し、いつしかクラスメイトの記憶から消えていった。
それから10年後、3年6組のクラスメイトに校庭に埋めたタイムカプセルの開封をかねた第二十七期卒業生同窓会の知らせが届く。
タイムカプセルには、遺言墨という命と引き換えに必ず相手に真意を伝えることができるという呪いがかかる都市伝説があった。
「この墨で書けば、必ず相手に真意を伝えることができる。でも、それが最後のメッセージとなる」
井ノ川が作成したというカウントダウンを兼ねた同窓会専用SNSアプリには、
「岸本李矢さんを憶えていますか。」
という爆弾ともいえる書き込み投稿された。
このクラスの卒業生たちの間に衝撃が走り、これが波乱のはじまりとなる。
その後、更なる書き込みから10年前、岸本はタイムカプセルに自分をいじめたクラスメイトへのメッセージを忍ばせていたことが発覚。
「あいつらの仕打ちは忘れない。」
「何年経とうが私の傷は絶対に癒えない。」
「大人になって順当に生きている日常をめちゃめちゃにしてやる。」
同窓会が近づくと専用のSNSアプリには、岸本へのいじめに関する告発が。
「いじめられっ子がいたよね」
「いじめの首謀者は木下さんだった」
「一番悪いのは井ノ川」
過去を明らかにされたくない一心で、いじめた罪をなすりつけ合うクラスメイトたち。
岸本をいじめていた者、長い物には巻かれろを貫いていた者や見て見ぬ振りをしていた者、其々の心情がどんどん心が疲弊していく。
挙げ句の果てには、同窓会を前にタイムカプセルを掘り返そうとする者まで現れる。
東京で人気絶頂の女子アナに成長した井ノ川は同窓会の幹事を任されているが、同窓会には出席するのだろうか?
同窓会に興味がなかった花田は、岸本の遺言墨が怖くて同窓会には出席することにした。
果たして同窓会で明かされる誰も知らない意外な真実とは。
乾ルカさん
どのような10代を過ごしていたか、どのような方が周りにいたか、集団でどのようなポジションにいたか。
それによって、過去の自分を再発見する読書にしてほしいです。
『おまえなんかに会いたくない』感想・レビュー
#読了
「おまえなんかに会いたくない」/乾ルカ
これ、結構ありがちな構図だと思った。卒業から10年も経てば社会に揉まれて、クラスメイトそれぞれで過去への考え方は異なってくる。誰が悪いとかじゃなく、全員が現在の価値観の中で責任転嫁し合っていると感じた
「人間の忌々しさ」を現してる一冊。 pic.twitter.com/bdxtygILgU— こばやん@読書垢 (@kobachanko19) October 6, 2021
乾ルカさんの『おまえなんかに会いたくない』読了。
同窓会をきっかけに甦る学生時代の記憶と葛藤に、感染症禍での閉塞感や不安が複雑に絡み合う。自分の地位を守りたいが為にカーストに囚われたクラスメイトの苛めと保身。結局は、過去の行いが自分自身を苦しめ、未来の自分に復讐する…。 pic.twitter.com/VnMOYowpfe— Eucharis (@Euchari01051293) October 5, 2021
元3年6組の男女6人と1人の女の子のタイムカプセルを開けるまでのヒリヒヤ群像劇。リアルすぎる描写に手汗が止まらない。
あなたはどの登場人物に似ていますか?『おまえなんかに会いたくない』(乾ルカ) pic.twitter.com/IJSncSwxfS
— 清風堂書店 (@seifudosyoten) October 3, 2021
まとめ
人気の男子・花田に告白したが振られてしまう岸本の言葉遣いや空気が読めずに不快感をまき散らす感じなど、リアルに描かれています。
現代のコロナ禍を生きる卒業生が過去と現在の話を行き来する中で、人の心の闇を炙り出す描写が生々しく感じました。
誰もが共感せずにみられない心の棘を描いた一冊です。