2014年「ビオレタ」で作家デビューした寺地はるな(てらち はるな)さん。
姉のためにウエディングドレスを縫う男子高校生とその家族を描いた『水を縫う』では、吉川英治文学新人賞にノミネート。
家族をテーマにした心温まる作品を数多く手がける注目の作家さんです。
寺地さんが手がけた最新作、2021年9月13日に発売の『ガラスの海を渡る舟』は、出版前から話題となり既に重版が決定。
しかし、当のご本人は「余ったらどうしよう」と不安をかかえていたとか。
注目の作家・寺地はるなさんが紡ぐガラス職人の兄弟の葛藤と成長を描いた感動作をご紹介します。
寺地はるな『ガラスの海を渡る舟』あらすじ・ネタバレ
兄の道(みち)と妹の羽衣子(ういこ)は、亡くなった祖父のガラス工房を引き継ぎ2人で働いている。
羽衣子は社交的で何事もそつなくこなせるが、自分だけの特別な何かを見つけられずにいる。
一方、発達障害かもしれない兄の道はコミュニケーションが苦手。
幼い頃から皆んなと同じ行動をとれず、うまく周囲と馴染むことができない。
そんな道だったが、ガラス作りでは才能を発揮。
お客さんが手に取るのは決まって道の作品だった。
羽衣子は兄の才能に複雑な思いをかかえ、つい感情的になってしまう。
道のの才能が羨ましくて妬ましく、兄が嫌いで受け入れられずにいた。
道もまた、そんな妹を苦手に感じている。
相容れない2人は度々衝突してしまうのであった。
そんな2人の関係に変化をもたらすきっかけとなったのは、工房を訪ねてきたある人物。
山添と名乗るその女性は憔悴した声で
「骨壷をさがしてるんです。娘のための、骨壷です。」
病気だった娘を亡くしたという山添は、おしゃれが大好きだった娘に似合うガラスの骨壷をオーダーしにきたのだった。
山添の悲痛な思いを聞いた道は、骨壷作りを引き受ける。
山添の切実な思いを胸に骨壷作りに没頭する道。
一方、道に対し複雑な思いを抱える羽衣子はその手伝いをできずにいた。
そして道は骨壷を完成させる。
それを手にした山添は
「これです。これでした。」
と涙を流したのだった。
「もう、泣かないでください。」
と羽衣子が声をかけると、道が
「前を向かなくてもいいです。前を向かなければいけないと言われても前を向けないというのなら、それはまだ前を向く時ではないです。」
傷ついた心を包み込むその言葉に、羽衣子は胸を針で突かれたような痛みを感じるのだった。
骨壷作りをきっかけに羽衣子は道の繊細な心に触れ、様々な出来事と向き合い成長していく。
葬儀社で働くある女性との出会いや羽衣子がかかえる恋人との関係、そして2人の両親のこと。
その一つひとつに迷い、葛藤しながらも羽衣子と道は手を取り合い、互いの存在を通して自分を見つめ直し寄り添うことを覚えていった。
ガラス工房を営む兄と妹の葛藤と成長を描いた物語です。
寺地はるなのプロフィール 出身は佐賀県唐津市
【文学】先程、作家の寺地はるなさんがご来店され、最新刊『#ガラスの海を渡る舟』にサインをして頂きました🚣既刊の『声の在りか』や今年の課題図書『水を縫う』 にもサインを頂いたので合わせてぜひどうぞ✨文芸書売場にて寺地さんサイン本を集めて展開中📚MK pic.twitter.com/FAkd2EazGE
— 紀伊國屋書店 梅田本店 (@KinoUmeda) September 17, 2021
生年月日:1977年??月??日([birth day="19770401"]歳くらい)
出身:佐賀県唐津市
職業:小説家
趣味:刺繍
小説を書き始めたきっかけは、32歳のときに結婚し夫に伴い出身地の佐賀県から大阪に転居。
大阪で子どもを出産したが、友人や知り合いもなく話し相手がいなかったとか。
35歳の当時、自分の中に蓄積していく言葉を吐き出したい思いにかられ、小説を書き始めたと語っています。
寺地はるなの受賞作品・小説ランキングトップ10
寺地はるなさんの小説を読んだ本や読みたい本など、登録数が多い順にご紹介します。(参照:読書メーター)
終わりに ガラスの海を渡る舟を読んで
寺地はるなさんの小説は、不安になったときそっと背中を押してくれて、自然と穏やかな気持ちになれる作品で、悩みを抱える人たちに優しく寄り添う物語です。
兄と妹の色々な物語を見せてくれることで、心が浄化されて心地のいい一冊でした。