芥川賞作家 中村文則『カード師』あらすじ/感想 人間の悪意や社会の残酷さをテーマにした作品

2021年5月22日に出版された中村文則さんの『カード師』。
2005年『土の中の子供』で芥川賞を受賞し、人間の悪意や社会の残酷さをテーマにした数々の作品を世に送り出してきました。

カード師とは"先の見えない今の時代を乗り越えるための希望"を描いた中村さんの22冊目になる長編小説です。
この本自体がすごく考えさせられる作品で怖い描写もあり、理不尽な世界を超えるための希望の物語です。

中村さんはもともと運命に関心があり、占いは運命を変えられるものかもしれないと思っていたそうです。

占い師の男に次々と降りかかる理不尽な出来事、そして窮地に追い込まれた彼がみた未来とは?

中村文則さん

男性1

カードはめくるまで何がでてくるか分からないところが人生に似ていませんか?
生きることそのものかなと思い"カード師"としました。

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芥川賞作家 中村文則の"カード師"あらすじ

カードの扱いが得意な僕は、違法カジノでディーラーをし、時にイカサマに手を染めていた。

一方で占い師を名乗り、相手の望むような未来をカードで演出している。
無論、僕は占いなど信じていない。

そんな僕の前に現れたのは、ある裏組織の一員、英子。
僕は組織と手を切るため、連絡先を変え身を隠していたはずなのに・・・なぜ居場所がわかったのか。

英子は言い放つ。
「あなたは逃げられない。」

ある男の写真を僕に向け、
「この男の占いの顧問になって、聞き出したことを全部伝えて」

嫌な予感しかなかったが、組織からは逃れられない。
僕は引き受ける外なかった。

不気味な男の正体とは?

組織の指示で向かった高級ホテルの一室。

そこに居たのは、不気味な雰囲気を纏う男。
名を佐藤といい、異常なほど占いに心酔していた。

僕はカードを駆使し、なんとか占いを的中させて佐藤を信用させることに成功。

すると佐藤の秘書が言う。
「あの男とは関わらない方がいいです。」

僕 「・・・・・なぜ?」

佐藤の秘書 「彼は人を殺している。それも、1人ではありません。」

僕の前任者の占い師も佐藤に殺されたという。
辞めたくても組織の指示に背くことができない僕は、佐藤と顧問契約を結ぶ。

占いを外せば殺される。
日々めくるカードは、僕自身の運命も握っていた。

裏組織の命令で不気味な男佐藤を占い続ける僕。

もし外したら、彼に命を奪われる。
逃げたら組織に狙われる。

理不尽と対峙する日々の中で、それぞれの過去が明らかになってくる。
そもそも佐藤は、なぜそこまでして占いを求めるのか?

それは、佐藤が経験したある悲しい出来事がきっかけだった。

真実にたどり着いた僕は祈りを込め、カードをめくる。

そこに見えた希望の光とは?
先の分からない今だから読みたい物語です。

中村文則さん

男性1

先のことが分かれば、悲劇を避けることができる。
先のことを知りたいという不可能で切実な願いを作品に込めました。

中村文則さんのプロフィールと受賞作

中村文則さんは、現在[birth day="19770902"]歳。
フリーターを経て、2002年に『銃』のデビュー作で新潮新人賞を受賞。
そして、2005年『土の中の子供 新潮文庫』で芥川賞受賞しました。

中村文則さんはペンネームで、本名は軸見文則さんです。
漫画家の久世番子さんとは小学校から高校までの同級生であり、また俳優の綾野剛さんとは親交が深いそうです。

ふりがな なかむら ふみのり
生年月日 1977年(昭和52年)9月2日
出生地 愛知県 東海市
学歴 愛知県立東海南高等学校
福島大学行政社会学部卒業

芥川賞作家 中村文則さんの受賞作

中村さんのデビュー作『銃』が2020年7月10日に映画化されました。
人間の悪意や社会の残酷さをテーマにした作品は日本だけでなく各国で翻訳され、世界からも注目を集めています。

映画化された作品 翻訳された作品
・去年の冬、きみと別れ、
・悪と仮面のルール、
・最後の命、
・火 Hee
・悪と仮面のルール
・掏摸(スリ)
・去年の冬、きみと別れ

 

銃(新潮社) 2002年:第34回 新潮新人賞を受賞してデビュー
2003年3月:初刊発行
2020年7月10日:劇場公開
遮光(新潮社) 2004年6月30日:発行
第26回野間文芸新人賞
土の中の子供(新潮社) 2005年7月30日:発行
第133回 芥川賞
愛知県芸術選奨文化賞
東海市民賞
最後の命(講談社) 2007年6月:発行
2014年11月8日:劇場公開
掏摸 スリ(河出書房新社) 第4回大江健三郎賞を受賞。

アメリカアマゾン
2012年3月のベスト10小説

アメリカの新聞 「ウォール・ストリート・ジャーナル」
2012年のベスト10小説

ロサンゼルス・タイムズ・ブック・プライズにノミネート

悪と仮面のルール(講談社) 2010年7月
2018年1月13日:劇場公開
去年の冬、きみと別れ(幻冬舎) 2013年9月:発行
2018年3月10日:劇場公開
私の消滅(文藝春秋) 2016年6月20日:発行
第26回ドゥマゴ文学賞
火 Hee(製作:吉本興業) 2016年8月20日:劇場公開(監督:桃井かおり)

2014年、ノワール小説への貢献ということで、アメリカでDavid L. Goodis賞を受賞。
他にも、2020年 第73回中日文化賞を受賞(中日新聞主催)されました。

中村文則さん”カード師”の感想

まとめ

カード師は先の見えない今の時代を乗り越えるための希望を描いた物語で、不安な世界に生きる道筋を照らしてくれる作品です。

未来は分からない、けれど選ぶことはできるのだ。
そんな心強さも物語からもらったように思います。

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